5. ジュエリーとデザイン
新緑や、満開の季節の花々、雪の結晶、雨上がりにかかる虹、瑠璃色の蝶・・など、「変わりゆくからこそ心動かされる美しいもの」、はこの地球上に、実に数多く存在します。
また、反対に、色あせることなく輝き続けるものには何があるでしょうか。
「愛情」など、目に見えないものを思い浮かべるかもしれませんが、地球の誕生から、時を刻んできた宝石(天然石)もまた、その神秘的な輝きで、古くから人々を魅了してきました。
最古の宝石と呼ばれるものは、錬金術が盛んになるずっと以前・・・石そのものを荒く削り、加工し磨き上げ、繋いだり、そのまま身体に着けただけのシンプルなものでした。
富や魔除けなどの装身具として始まった石の加工技術は時の流れとともには発展し、デザインも変化していきます。
まるで「永遠」を連想させる宝石の存在は、ある時は神秘的・宗教的な儀式の主役であったり、家系に代々引き継いでいく「証」や「血」のような意味を持ってきました。そのように宝石に込めた意味を表現する上で、作り手にとってデザインにも大きな価値が生まれていったことは容易に想像できます。
『宝石を選ぶ場合、何を重視するか』・・・というアンケートを実施したジュエリー関連企業のデータの1位は、「デザイン」2位が「品質と価格のバランス」であったといいます。毎年、この順位はあまり変わることはないようです。
幸い、時代の最先端にいる私たちは、メソポタミア、エジプト、マヤ等の古代文明から始まり、ルネッサンス、ビクトリア王朝、アール・ヌーボー、アール・デコ、モダンアートに至る様々なジュエリーデザインを、インターネットや書籍、またはアンティークコレクション等で目にすることができます。
ジュエリーの美しさの奥にある、作り手の石に対する愛情、メッセージを探ってみると、一つ一つのジュエリーが作られた時代背景、環境、慣習、作り手の明晰ささえも見えてきます。
ジュエリーを楽しむ私たちも、一つの角度からでなく、宝石に入り込む光のように、様々な角度からジュエリーを眺め、見極め、運命の一品(逸品)に出会いたいものです。 |